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「種」の先に生まれる笑顔を想い、
日本、海外の農業を支えていく。

カネコ種苗株式会社
代表取締役社長 金子 昌彦

更新日:2022年5月18日

1956年生まれ、群馬県富岡市出身。大学卒業後、群馬県庁へ入庁。
1987年、カネコ種苗入社。
2012年、代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

農業の起点である「種」から始まり、総合的な種苗メーカーへ。

カネコ種苗は明治28年(1895年)に群馬県前橋市で創業しました。近隣の採種農家から野菜の種子を買い集めて、小売りや卸売りをしたのが始まりで、現在も種苗業は当社の主要事業です。

農業の起点にある産業であり、農業生産を根底から支えることが当社の一番の使命になっています。私が30代で入社したときに当時社長だった義父から「いちからやってみなさい」と言われて、倉庫の荷物担ぎや畑での種採りから始めました。なんといっても現場での仕事は楽しかったですね。

種苗業界はそれぞれが地域に根ざしていて規模も様々ですし、例えばキュウリに特化している専門的な会社もあります。そのなかで当社は種苗の品種改良、養液栽培システム、農業資材、肥料・農薬など総合的に手掛け、農業全般の分野をバランスよくやっているのが特色です。育種農場では野菜・飼料作物の品種改良を、研究所ではバイオテクノロジーによる野菜と花の新品種の開発を行っています。自社開発品種としては、サツマイモの『シルクスイート』や枝豆の『湯あがり娘』などがご好評いただいています。

会社の方針として農業生産の現場に寄り添い、生産者の方々から直接話を伺うことを大切に、全国に16支店を展開して現地密着型でやってきました。やはり現場に住んで現場のなかに入って仕事をすることで一番心が通じますし、ニーズも掴めるということですね。日本は地域によって気候や土壌も違うので、現場を知ることは重要です。

ハイテクと国際化を進め、一歩先の農業を牽引。

下支えをする業界ということで、『安定しているけれど成長もないのかな』と思われるかもしれませんが、いま農業は相当な様変わりをしています。バイオテクノロジーが急速に進化し、ドローン、植物工場といった新しい技術もたくさん入ってきていて、それらにどう対応していくかがひとつの課題でもあります。

昔から国際的な業界でもあり、当社も海外に拠点を置いています。海外とのつながりは、まず、種取り。現在販売されている種の9割は、海外の畑を借りて栽培し、そこで種を採っています。もうひとつは販売。日本の会社の品種改良技術は非常に優れているので、海外でも受け入れられています。特にアブラナ科のキャベツやブロッコリーは世界的に見てもレベルが高いです。

海外展開については今後、積極的に取り組んでいかなければなりませんし、商品としては「野菜の種」「花の種」「栽培システム」を三本柱として、世界で戦う会社にしていかなければならないと考えています。

いまは日本から近く、人口が多く、野菜を食べる人が多いという観点から、東南アジアにふたつ拠点を展開しています。そこを充実させながら、新たな拠点を増やしていくことが必要だと思っています。ヨーロッパやアメリカの会社も強いので競合は多いですが、世界的にはまだ食料が足りていないのが現状です。その中で野菜の需要も高まっていますので、ここに我々のチャンスがあると思っています。

仕事の先にある生産者や消費者の笑顔がモチベーション。

「育種(利用価値の高い新種の開発・改良)」に関しては、新しい技術によって以前より開発までの期間が短くなってきましたが、それでも時間がかかる仕事です。

新品種を作るためには交配親を作り、それを掛け合わせていく訳ですが、まず交配親を作るのに最低でも7年かかり、そこから特性などを検討し、実際に畑で3年くらい栽培しないと販売品種にならないので、単純に考えても10年以上はかかる。気が長いといえば気が長いですが、それはやむを得ないところですね。

育種研究員は相当辛抱強さが求められますし、会社もその間、投資している訳ですから忍耐力が必要です。どちらにとっても“仕事の先に生産者や消費者の皆さんの笑顔がある”という気持ちを強く持っていないとできない仕事といえるでしょう。

たとえば、サツマイモの『シルクスイート』が生まれたのは波志江研究所(伊勢崎市)ですが、最初ここではウイルスフリーの苗(無病苗)を生産していました。でもある時、研究員から「当社は種屋なのだから育種をしませんか」という話が出て、やってみたらうまい具合にいい品種が出て、いま広まっているという訳です。やはり、現場で育種をする人の熱意というものがすごく大事だと思いますし、仕事で成果を出すのはそういう人たちなのだろうと思っています。

人を大事にする会社であること。

事業はM&Aの手法で広がってきて、多くは先方から話をいただいて進めてきました。当社の方針として、合併の際は基本的に、希望する先方の社員は全員受け入れてきました。働いている人を大切にする姿勢は大事だと思っているからです。社員にとっても、人を大切にする会社だと伝われば、安心して働けるのではないかと考えています。

人材については、新卒採用が主ですが、その理由として農業関係の仕事は営業も時間がかかるということです。お客様と腹を割って話せるようになるには1年や2年ではうまくいかない。そういう世界に馴染むには新卒からやっていくほうがいいのかなという判断です。

もちろん中途採用によって、力が大きくアップしたところもあります。特に研究部門においては、トマトや牧草、バイオテクノロジーなど各分野の一流の技術、知識を持った人材に入ってもらえ、事業に大きく貢献してくれました。

今後も中途採用の場合はジョブ型、この仕事にこういう人が欲しい、という形で求めていく形になると思います。他の人が持っていないような能力や経験がある人がいいと思いますね。農業のイメージが強いためか、新卒でも文系学生の応募は極端に少ないんです。ここは文系の方にもっと応募してもらえたら嬉しいですね。海外は基本的には現地採用ですが、社内公募も行ったら意外に反応が良くて、これは有効だなと期待していたのですが、その矢先にコロナ禍になって、赴任は一旦止まっているところです。

カネコ種苗で能力を遺憾なく発揮してもらえる環境づくりを。

採用にあたって重視するのはごく一般的なことだと思いますが、前向きな気持ちを持っていること。一番いいのは仕事を楽しむ力があることだと思います。自発的に考えて提案していく力があるとすごくいいですね。

もうひとつはコミュニケーション力、折衝力ですね。知識を持っているだけでなく、それをどう活用して結果を導くかを考えられることが大切だと思います。

先ほども忍耐力が必要な仕事だという話をしましたが、使命感を持ってやっていたとしても、何かつまずいた時には心が弱くなったりすると思います。その時に大事なのは話ができる上司や同僚がいるか、ということ。『経営者の仕事は環境整備業だ』と思っているので、能力のある方々に、ご縁があって当社に来ていただいているのですから、ここで遺憾なく力を発揮してもらえるような事業の設定や設備・環境・心をいかに整えることができるかが、我々に求められているところだと考えています。

農業、食を通して社会貢献を果たしていく仲間として。

いまの企業には求められることが増えていて、そうなると重要なのは人数ではなく質であり、多様性ですね。いろいろな能力を持った人が集まって、それぞれが活躍する形でないといけない。ですから、ここに集まっている才能を遺憾なく発揮してもらうことで、自然と結果はついてくると思っています。

大きく言えば、会社のことを理解し、社会貢献につなげてもらえるような人が新たに増えていったら嬉しいですね。当社は生命のもとである食、農業生産を徹底的に支えていくんだということを、営業部門も管理部門も全ての部署の皆が理解し、仕事をしていってほしいと願っています。

社員同士も仲が良く、社内は非常にいい雰囲気だと思うんですよ。常に心が安定して仕事に向き合えるのは非常に大切なことで、そのためにも社員を大切にしていきたいと思います。

我々の業界は横のつながりが強く、これは農業に携わっているとそうなるのかなと思っています。一般社団法人 日本種苗協会では、業界の仲間たちと食育に取り組んでいます。そこでは野菜の種蒔きから収穫という一連の栽培を体験することで、食べ物に対する感謝の心を学んでもらっています。日本種苗協会も当社も社会に貢献することで自分の価値を高めていこうという理念で取り組んでいますので、そうした意識をもって仕事をしていただけるといいなと思います。

中途採用の場合、もちろん迎える側の立場も大事で、その人の個性を尊重し、孤独にしてはいけない。M&Aでもそうですね。仲間として迎え、いかに能力を発揮してもらうか。それが会社の発展につながるし、そういったご縁を大事にしていきたいと思っています。

編集後記

コンサルタント
戸塚 理仁

種苗業界を牽引する同社は、群馬の地から日本のみならず海外の農業分野にも影響力を広げています。なくてはならない食料分野、生活を豊かにする園芸分野において幅広い事業展開をしているのも印象的です。種苗の品種改良、研究には非常に長い年月が必要ですが、同じくそこに携わる人の育成にも向き合い、長く育てていくという企業風土に感銘を受けました。

地域密着とグローバル展開という二つの側面を持ち、様々な課題にチャレンジしている同社のご支援を、ぜひ続けていきたいと思います。

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